照明器具

 

解 説

 「祈りの家」である聖堂にとっては、照明はふさわしい雰囲気をつくりだすために重要な役割を果たすものです。

 

 世界平和記念聖堂の照明器具は天井から吊るされ、蓮の花が今開いたばかりという感じです。
 デザインは村野藤吾さんのものです。(1)
 世界平和記念聖堂の建設を思い立ったラサール神父さんは、その設計を競技設計(コンペ)によって進めようとしました。177点の応募がありましたが、一等は選出されませんでした。
 そして、コンペ審査員の一人であった村野藤吾さんが引き受けることになったのです。

 

 照明器具が天上から吊り下げられている感じが、ストックホルムのヘガリット教会の感じに似ているそうです。(2)(村野さんは、1953年ヘガリット教会の中で、『どうか、私に批の教会の作者のように才能を与え給え、どうか私の努力が死ぬまで枯れずに続くように導き給え』と祈られたそうです。)(3)
 聖堂設計のコンペの主題は、モダン、日本的、宗教的、記念的という言葉に集約される内容でした。(4)
 蓮の花をイメージした村野さんのデザインは、世界平和記念聖堂の日本的な雰囲気を醸し出すのに大いに貢献しています。

 

 聖堂建設にあたっては、恒久平和を願う熱い祈りがこめられて、国境や宗教を超えて浄財が寄せられましたが、仏教関係者からも多大な協力がありました。
 仏教の伝統のなかで豊かな宗教的な意味をもつ蓮の花をかたどったのは、仏教関係者への感謝の心の表われでもあります。
 (1951年高松宮を名誉総裁に、当時の内閣総理大臣吉田茂を総裁にして結成された「広島平和記念聖堂建設後援会」の役員に、高野山真言宗管長、曹洞宗管長の名前もみえます。)(5)

 

(1)「世界平和記念聖堂 広島に見る村野藤吾の建築」石丸紀興、相模書房、202頁
(2)同上 201頁
(3)同上 94頁
(4)同上 105頁
(5)同上 139頁