欄間彫刻(Part4)

 

解 説

彫刻1「叙階の秘跡」

 

 左右に「ローソク」が、中央に「聖書」と「ストラ」、そして「パン」と「杯」が刻まれています。

 

 「洗礼と堅信によって神の民に属するすべての信者はキリストの祭司職をうけます。この祭司の民の中から、共同体の頭であるキリストの名において祭司としての役務を行う司教、司祭が立てられます。また、共同体への奉仕のために助祭が立てられます。これらの司教、司祭、助祭の務めに任じる恵みを与えるのが、叙階の秘跡です。」(「カトリック教会の教え」、カトリック中央協議会、227頁)
 「司教・司祭は叙階の秘跡によって、教会の頭であるキリストご自身から権能をあたえられ、キリストの代理として、キリストの名において行動する者となります。・・・・・・
司教・司祭がキリストの代理として執行する秘跡は、必ずその秘跡の恵みをもたらします。そのとき人間である司教・司祭を通して働かれるのはキリストご自身だからです。」(同上、228頁)

 

 「聖書(福音書)」は、福音宣教がキリストの祭司職の本質的な使命であることを示しています。
 助祭の叙階式で、司教は福音書を手渡して、言います。
「キリストの福音を受けなさい。あなたはこの福音を告げる者となりました。読んだことを信じ、信じたことを教え、教えたことを実行するようにしてください。」

 

 司祭の叙階式で、司教が按手し、叙階の祈りを唱えた後、新司祭は「ストラ」を助祭の形から司祭の形へ直し、「カズラ(祭服)」を着ます。
そして、司教は、新司祭の手のひらに聖香油を塗り、パテナに載せた「パン」とぶどう酒を入れた「杯(カリス)」を新司祭に渡して言います。
「神にささげる聖なる民の供えものを受けなさい。あなたがこれから執り行うことをよくわきまえ、それにならい、主の十字架にかなう生活を送りなさい。」

 「ローソク」は、ミサがささげられる祭壇に置かれ、キリストの光を輝かせます。

 

 「聖書」、「ストラ」、「パン」、「杯(カリス)」、「ローソク」すべてが、キリストの祭司職の源泉と中心が、救い主イエス・キリストの死と復活を記念する「ミサ(聖体祭儀)」にあることを表しています。

 

 「主イエスは、引き渡される夜、パンを取り、感謝の祈りをささげてそれを裂き、『これは、あなたがたのためのわたしの体である。わたしの記念としてこのように行いなさい』と言われました。また、食事の後で、杯も同じようにして、『この杯は、わたしの血によって立てられる新しい契約である。飲む度に、わたしの記念としてこのように行いなさい』と言われました。」(コリントの信徒への手紙一11・24-25)

 

 「聖体が教会生活の中心であり頂点であるならば、それはまた司祭の役務の中心と頂点でもあります。だからこそ、わたしは、主イエス・キリストへの満ちあふれる感謝の心をもって再びいいます。聖体は『司祭職の秘跡のおもな、そして中心的な存在理由です。実際、司祭職は、聖体の制定の瞬間に生まれました』。」(教皇ヨハネ・パウロ二世回勅「教会にいのちを与える聖体」n.31)

 

※「ストラ」とは、祭服の一部で、細長い帯状のものであって、司教と司祭はこれを首のまわりにかけ、助祭はこれを左肩からたすき状にかけます。ミサのとき、秘跡をさずけるとき、聖体の儀式のときに着用します。

 

 

彫刻7「病者の塗油の秘跡」

 

 中央に「壺」が、左側に「ストラ」が掛けられた「十字架」、右側に百合の花が浮き彫りにされています。周囲を、星空が飾っています。

 

 「病者の塗油は、病者のための油を病人に塗油しながら、司祭が行う祈りにより、その人の苦しみを和らげ、慰めを与え、主への信頼のうちに病苦をキリストの受難に合わせてささげるよう勧め、最後の時が来ているならば、平安のうちに自分のすべてを神のみ手にゆだねるよう励ます秘跡です。」(「カトリック教会の教え」、カトリック中央協議会、222頁)

 

 福音書には、病人に回復を与え、人をいやし、汚れた霊を追い出すイエスの姿が、度々描かれています。イエスは、病気の苦しみを担う人に深い関心を寄せ強い共感を抱いていました。
それは、イエスの基本的生き方を示すものであり、救いの恵みの現実的なしるしでもありました。
 イエスから宣教に派遣された弟子たちも「多くの悪霊を追い出し、油を塗って多くの病人をいやし」(マルコ6・13)ました。


復活したイエスは、弟子たちに語りました。
 「全世界に行って、すべての造られたものに福音をのべ伝えなさい。・・・彼らはわたしの名によって悪霊を追い出し・・・病人に手を置けば治る。」(マルコ16・15-18)

 

 教会は、病人をいやすという使命を救い主イエス・キリストから授けられました。
 教会は、病人をいやす典礼を守り行い、「病者の塗油の秘跡」として大切にしてきました。
 「あなたがたの中で病気の人は、教会の長老を招いて、主の名によってオリーブ油を塗り、祈ってもらいなさい。信仰に基づく祈りは、病人を救い、主がその人を起き上がらせてくださいます。その人が罪を犯したのであれば、主が赦してくださいます。」(ヤコブの手紙5・14-15)

 

 この秘跡で使われる油は、聖木曜日にささげられる聖香油のミサの中で司教によって祝福された油です。
 「壺」は、病者に塗られる油を象徴しています。

 

 「病者の塗油の秘跡」を授けるのは司教と司祭です。
 「ストラ」は、司祭(司教)のシンボルです。
 司祭は、病人の額と両手に油を塗りながら、次のように祈ります。
  「この聖なる塗油により
  いつくしみ深い主・キリストが
  聖霊の恵みであなたを助け、
  罪から解放して
  あなたを救い、起き上がらせてくださいますように。」

 

彫刻6「結婚の秘跡」

 

 中央に、十字架のついた「ハート」が浮き彫りされています。「ハート」の中には、二つの「指輪」が描かれています。周囲に「花輪」が、祝福のしるしとしてアレンジされています。

 「一組の男女が互いに、生涯にわたる愛と忠実を約束し、相互に助け合いながら、子供を出産し養育することを目的として、家庭共同体を築き発展させるための恵みを与える秘跡が、結婚の秘跡です。」(「カトリック教会の教え」、カトリック中央協議会、234頁)

 

 結婚は、神の創造の働きと深い関わりがあります。神は天地創造のわざの頂点として、人間を男と女に創造され、互いに助け合い、相手を大切にするように造られました。(創世記1・26-28;2・18-24参照)

 

 イエスは、十字架の死によって、わたしたちに愛の模範を示してくださいました。
「わたしがあなたがたを愛したように、互いに愛し合いなさい。これがわたしの掟である。友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。」(ヨハネ15・12-13)

 一組の男女が、生涯の歩みをともにすることを誓い、誓いを守ることを決心することは、イエスの隣人愛の教えをもっとも自然で、具体的なかたちで実現することです。
 カトリック教会の結婚式の中で、結婚する二人は、次のような誓約を交わします。
 「わたしたちは、ただ今より、夫婦として、順境にあっても逆境にあっても、豊かなときも貧しいときも、健康のときも病気のときも、愛と忠実を尽くすことを誓います。」

 

 「ハート」は、愛のシンボルです。

 

 また、結婚する二人は、この堅固な変わらぬ愛と忠実を、目に見えるかたちで表明するために、次のことばを添えて、「指輪」を交換します。
 「わたしの愛と忠実のしるしとして、この指輪をお受けください。」

前の記事

聖堂案内シリーズその9