第22回聖トマス小崎巡礼                           2011年1月23日(日)

HOME > 殉巡ネット > 第22回聖トマス小崎巡礼

第22回 聖トマス小崎巡礼


 2011年1月23日(日)は、不思議と寒さが幾分和らいだ朝となりました。9時過ぎ、各地からの巡礼者が「年に一度の同窓会」に続々と集まり始めました。中には数年ぶりに来られた方もいらして、「いやー、お久しぶりです。やっと来ました」「まぁまぁ、よくいらっしゃいました!」と高揚した想いで挨拶を交わされる方々の顔は、神さまの喜びの朝日を受けて美しく輝いていました。

 9時30分、小鐘の響きと共にごミサが始りました。3人の少年聖(ルドビコ茨木・長崎のアントニオ・トマス小崎)と同じ年頃の福山暁の星女子中学1年生6名を一番近くに約110名が祭壇を囲み、感謝と賛美を今ここに居てくださる神さまに捧げました。ミサ中の説教でアルナルド神父様はキリスト教一致祈祷週間に言及され、「分裂は史実であるが、共に一緒に祈ることが大切である。独りだけではなく共に一緒に祈る。二十六聖人も共に一緒に歩み祈ったからこそ最後まで裏切らなかった。力になった」と、共に一緒に歩み祈ることの大切さを力説されました。

 小さな聖堂に集った私たちが歌う「二十六の聖」の歌声は、天の国で祈ってくださっている二十六聖人や多くの死せる先達との聖徒の交わりにより澄みわたり、遠く長崎西坂の丘、そして天上のエルサレムにまで響き届いたに違いありません。ごミサは素晴らしいですね。

 阪田光昭巡礼委員長による各地からの巡礼者紹介の後、信徒ホールに移動して恒例の女性の会特製カレーライスタイム。三原の聖トマス小崎巡礼といえばこの特製カレーライスと云われるほど好評を頂いており、参加者は昨年より20名位少なかったのですが、用意されたカレーはほぼ完食となりました。食べて下さった方、作られた方、準備と片付けをされた方、ありがとうございました。例年通り広島司教館から肥塚神父様、尾道教会からは山口神父様も来られて、11時過ぎ、教会入り口坂の上ルルドのマリア像前にて全員でお告げの祈りを唱え、長崎への道1000分の13Kmへいざ出陣です!

 城町の聖トマス小崎像前、「13Kmは無理でもここまでは歩くぞ」と、高齢の方々も集まり、共に一緒にロザリオの一連を祈り巡礼歌を歌いました。今年の巡礼カードには「二十六の聖」の歌詞が刻まれています。「歩くつもりは無かったんで、ごミサ前に今年の巡礼カードを貰わんかったんじゃ。余分があるかのぅ?」と、大先輩の力石さん。私は自分の首に掛けた巡礼カードを取り、力石さんの首にそっと掛けました。
阪田先生ご夫妻により、きれいに掃除と手入れをされた聖トマス小崎像は、「凛」とした表情で今日も伊勢の方角を向き、柔らかな青銅色が放つ光は長崎への道1000Kmを昨日も今日も明日も照らし続けます。製作者沖田先生の奥様がご像の一番前で祈っておられました。肥塚神父様が言われました、「おっ、なんだかすごく輝いているね、トマス小崎の顔……」。

 三原駅にて数名の方と別れ、一行は最初の休憩地まで歩を進めます。大型スーパーの休憩地で用意されたコーヒーにお茶やお菓子を頂き、しばし休み、祈りを捧げて沼田川(ぬたがわ)河川敷に向かって出発です。広島県立大学三原キャンパスを左手に見ながら約90名の徒歩巡礼団は行列を続けます。

 沼田川河川敷手前の橋を渡るちょうどその時です、ちょっとした異変に気付きました。なんと、例年先頭を切って歩かれる阪田光昭巡礼委員長が、これまた例年しんがりを行く私の眼前におられるではありませんか!異変に気付かれた阪田邦子奥様が優しい声をかけられると、「普通に歩いているつもりなんだけど、みんな僕を追い越して行くんだ。なんだか力が入らなくて……」。
奥様の助言で暫しの間伴走車に乗られましたが、また懸命に歩かれました。

 元来、暢気で機微に疎い私はその時初めて分かりました、巡礼に参加されている多くの方々は歯を食いしばって歩かれているのだと云うことを。阪田委員長以外にも80歳代の方が数名おられると聞きました。この想い伝えねば、伝えねば。
昨年の報告と感想の文に「わずか13Km、されど13Km」なんて書きましたが、今年その意味が鮮明になりました。13Km×想いの数=されど13Kmであると。それぞれの「想い」は時空を超えて「されど13Km」となるのでした。
本郷町に入り、スーパー空き地で最後の祈りを唱え「二十六の聖」を歌い、そして3名の神父様方の手を通して神さまからの祝福を頂き、今年の聖トマス小崎巡礼は参加90名全員完歩して無事終わりました。JR本郷駅にて巡礼者とお別れをし、今年もまた西へ東へと列車は離れて行きました。来年も多くの方が参加されますよう、お土産のセシリア三永典子さん作小冊子『日本二十六聖人と西国街道』をどうぞ多くの方にご紹介ください。参加された全ての巡礼者に、特に遠く長崎や神戸から来られた巡礼者に、頭が下がります。共に一緒に歩んだ巡礼者から「歯をくいしばって歩む」勇気を頂きました。
ありがとうございました!また逢う日まで、ごきげんよう!

 今年は前夜祭のお泊り会で、昨年12月にNHKで放送された『高山右近』のビデオを聖堂にて鑑賞しました。カトリック信者以外の視点から作られたTV番組で、「絶対に裏切らない生き方」がテーマでした。生き残るために離反裏切りは常という徳川家康までの下克上の戦国の世、二十六聖人が生きた時代、ある意味現代にも通ずるところのある当時の世相の中で、ユスト高山右近は生涯「絶対に裏切らない」武将であった。「汝の敵を愛せよ」…たとえ相手から裏切られても「絶対に裏切らない」。その生き方を讃えて紹介した番組でした。マニラで没するその日まで、神さまの呼びかけにこたえて殉教を生きたユスト高山右近もまた、二十六聖人と同じように生涯「歯をくいしばって」歩まれたのでした。
「絶対に裏切らない」……テーマですね。

 三原の皆さん!三原には大きな大きな宝がありますよ!
我らが「聖トマス小崎」です。金銀貨幣には換算できない宝です!
どうか多くの人の目に留まりますように。

三原教会 向井